前回のブログ、「子どもがいない夫婦の相続」では、夫婦お互いが遺言を遺しておくのが相手に対
する思いやりと書きました。
今回は、もう少し詳しく遺言の内容についてみていきましょう。
子どもがいない夫婦の夫Aさんと妻Bさんは「私の亡き後は、すべて遺産は妻(夫)に相続させる」
との遺言を書きました。月日は流れ、夫Aさんが先に亡くなり、妻Bさんが夫の財産をすべて相
続しました。
夫亡き後は、近所に住む夫の姪Cさんが親身に面倒をみてくれました。数年後、妻Bさんが亡くな
り、夫の姪Cさんが遺言書を発見しました。みると、「自分の財産はすべて夫Aさんに相続させる」と
書いてあります。でも、Aさんは既に他界しています。Bさんの相続人もいません。このような場合、
どうなるのでしょうか?
Bさんに相続人がいない場合、Bさんの財産は、家庭裁判所の一定の手続きを経て、国庫に納め
られます。それでは、あまりにAさんの姪Cさんが気の毒なので、家庭裁判所は、Cさんが「特別縁
故者に対する相続財産分与」の申立をし、家庭裁判所が認めれば、Cさんは遺産の全部または
一部をもらえることにしました。(遺産の全部をもらえることはほとんどありません)とはいうものの、
この手続きが終了するまでには1年程度を要し、時間も手間もかかってしまいます。
遺言を書く際に、Bさんが「私よりも先に夫が死亡している場合は、その財産は夫の姪Cさんにす
べて遺贈する」という文言を書いておけば、何の問題もなくBさんの遺産はすべてCさんにいった
のです。このような遺言を予備的遺言といいます。
夫のAさんが亡くなった時点でBさんが遺言書を書きかえればよかったのですが、そのようなことを
思いつかないケースも多いでしょう。また、その時点でBさんが判断能力を失っている可能性もあり
ます。子どものいない夫婦が遺言を書く際には、夫(妻)が先に亡くなった場合、だれに相続しても
らいたいのかも書いておかれるとよいでしょう。
※予備的遺言は、子どもがいない夫婦だけでなく、すべての人の遺言にもあてはまります。
ここでは事例として、子どもがいない夫婦を取り上げています。