相続税の基礎控除額が引き下げられます
相続税の基礎控除とは、「ある一定の相続財産額までは相続税を支払わなくてもいいよ」というものなのですが、この控除額が来年度(2015.1.1~)から、4割も引き下げられます。
事例でみていきましょう。
一人っ子のA子さんは、お父さんを亡くしました。
お母さんは既に他界し、相続人はA子さんだけです。A子さんは独立して数年前にマンションを購入しています。
お父さんの相続財産は、自宅土地50坪2,000万円、預貯金3,000万円、合計5,000万円です。
現行での基礎控除額は 5,000万円×(1,000万円×法定相続人数1人)=6,000万円
相続する財産が6,000万円までなら、相続税はかかりません。
お父さんの相続財産は、5,000万円なので、相続税はかからないのです。
ところが、2015年以降、基礎控除額が4割縮小され、
3,000万円×(600万円×法定相続人数)になるため、控除額が3,600万円に減ってしまいます。
A子さんのお父さんの相続財産は、5,000万円なので、
5,000万円 - 3,600万円 = 1,400万円
1,400万円の部分に対して、相続税がかかってきてしまうのです。
基礎控除の金額
相続人の数 | 現行 |
改正後
2015.1.1~ |
課税額UP
|
1人 | 6,000万円 |
3,600万円
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2,400万円
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---|---|---|---|
2人 | 7,000万円 |
4,200万円
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2,800万円
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3人 | 8,000万円 |
4,800万円
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3,200万円
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4人 | 9,000万円 |
5,400万円
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3,600万円
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5人 | 10,000万円 |
6,000万円
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4,000万円
|
基礎控除額が引き下げられても、相続税を安くできるいくつかの控除があります。その1つが 「小規模宅地等の特例」です。
小規模宅地等の特例
上記の例で条件を変えてみてみましょう。
仮に、A子さんがお父さんと同居していた場合には、自宅土地の評価額が80%も減額される「小規模宅地等の特例」を利用することができます。
2,000万円の土地の評価が、何と400万円とみなされるのです。
2015年以降、この特例を受けることができる自宅の土地面積の上限が、現行240㎡から 330㎡に拡大し、広い土地を持っている人にとっては有利な制度になります。
※被相続人の自宅については、配偶者もしくは同居親族か持ち家を所有していない子が相続しなければ、特例は適用されません。
配偶者の税額軽減
夫が亡くなり、その相続財産を妻が相続する場合、「配偶者の税額軽減」という控除があります。
妻が相続する財産が「1億6千万円以下」または「法定相続分相当額以下」の場合、相続税がかりません。 よほどの富裕層の妻でない限り、妻が相続した財産については相続税がかからないということです。
「夫婦がともに苦労して築いてきた財産」という考えのもと、夫亡き後の妻の生活保障に重きをおいた制度だといえます。
2次相続に気をつけて!!
夫が亡くなり、妻と長男、長女の3人が相続人。夫の相続財産1億6,000万円
夫から妻への相続を1次相続、(同世代間の相続) 妻から子どもたちへの相続を2次相続といいます。(次世代への相続)
先の「配偶者の軽減税率」は、とても魅力的ですが、だからといって下記表のケース2のように、1次相続で妻が全財産を相続してしまうと、2次相続で相続税が高額になり、1次、2次トータルで考えると、メリットがないということも起こってきます。もちろん、妻が全財産を相続した後、生前贈与を積極的に行う場合には、2次相続時には相続財産額が減少しているので、選択肢の1つにはなりますが。
1次相続・2次相続の分け方
相続財産1億6000万円 相続人:妻と子ども2人
※1次相続の財産を、そのまま子が相続するとして計算
あまり相続税のことばかりに気を取られていると、数字だけをみて得なほうへ得なほうへと意識がいってしまいますが、やはり一番大事なのは、相続人同士がもめないようにすることです。
完璧な相続対策を行ったつもりが、相続発生時には税制が変わっていて何のメリットもなかったということも考えられます。
もめない相続 → 納税資金の確保 → 節税 の順番で考えるとよいでしょう。
「うちはどうなんだろう」と思われてる方は、まずは、財産を把握することから始められるのがよいですね。