子どもがいない夫婦の相続は、生前に何の対策もせずに亡くなった場合、もめる可能性が高い
です。子どもがいない老夫婦のケースをみてみましょう。
夫が先に亡くなり、相続人は妻と夫の兄弟2人。しかも夫の兄が既に他界しており、甥と姪が相続
人に。
相続財産は、自宅2,000万円、預貯金200万円
相続割合は、妻が4分の3、 夫の弟が8分の1、甥・姪が16分の1ずつ になります。
この割合に沿って分けると、妻→1,650万円 夫の弟→275万円 甥・姪→1,375,000円ずつ。
妻が自宅を相続しようと思えば、夫の弟へ275万円 甥・姪にそれぞれ、1,375,000円ずつ支払
わなければなりません。
夫の弟は、好意的で相続分を放棄してくれました。ところが、甥と姪は、小さい子どもをかかえて、
経済的に余裕がなく、どうしても1,375,000円を支払ってほしいと言ってきました。
こうなると、妻は、預貯金200万円を吐き出しても足りません。
妻は、自宅を売却することも考えましたが、住むところを失うことに、どうしても二の足を踏んでしま
います。結局、当初50万円ずつを甥と姪に支払い、不足分については、毎月1万円ずつを分割
で支払うことで合意しました。妻は家を残すことはできましたが、毎月2万円の出費はきついです。
妻からすると、夫の兄弟や甥や姪と財産の分け方を話し合わなければならないのは、相当なストレ
スです。亡き夫が生前に「全財産を妻に相続させる」という遺言を書いておいてくれれば、すべて
の財産は妻のものになったのです。
夫婦のどちらが先に逝くかは、だれにもわかりません。夫だけが遺言を書くのではなく、妻も遺言
を遺して、夫に無用なストレスをかけないようにするのが、相手に対する思いやりだと思います。