夫が不貞をしても、婚姻関係が既に破綻していた場合は、慰謝料は請求できないとされています。
妻から慰謝料を請求された夫は、このことを理由に慰謝料の請求を拒むことが多いです。
では、婚姻関係が破綻しているとは、どういうことをいうのでしょうか?
具体的には、夫婦の相互義務である同居、協力、扶助がなく、加えて性的関係がない場合といえま
す。離婚協議中に別居している状態なら、婚姻関係が破綻している状態だといえるでしょう。
夫婦喧嘩が絶えなくても同居している場合や、性交渉がある場合、家族旅行に行っている場合、
離婚についての話し合いがなされていない場合などは、婚姻関係が破綻しているとは認められな
いことが多いです。以下、裁判例です。
「A(夫)が原告(妻)に対する気持ちが冷めたなどと言い出し、同年9月以降、
Aが離婚を言い出すようになったなどと述べて、両者の関係が悪化していったことを自認してい
るが、その事実をもって両者の婚姻関係が破綻したとは到底いえず」
東京地裁 平成20年12月26日判決
「A(夫)と被告(不倫相手)が男女の関係になった平成16年10月から12月初めころの原告
(妻)とA(夫)は、Aの朝帰りやAの両親に関する原告の非礼な発言等が原因で喧嘩が絶え
なかったものの、生まれたばかりのBと3人で生活し、原告(妻)が離婚届の作成に応じたのも
真意に基づくものとはいい難く、離婚届を提出する直前まで性交渉があり、提出後もA(夫)
は原告(妻)が作った弁当を持参して出勤するなど、外形的には通常の家庭生活を続けて
いたこと等を考慮すると、両者の婚姻関係が破綻していたと認めることはできない。」
東京地裁 平成21年 5月28日判決
裁判 所は、簡単には婚姻関係の破綻を認めないようです。