遺言相続 会話式Q&A 5.子どもがいない夫婦、遺言書は必要?

登場人物 恵子さん(68歳  元デザイナー、年金暮らし)  恵子さんの夫、正夫さん(75歳 退職後年金暮らし)

 

恵子さん 「こんにちは。今日は夫と一緒に相談したいことがあってお伺いしたの。」

すずきさん 「こんにちは。素敵なご主人様ですね。」

正夫さん 「お褒めに預かり光栄です(笑) すずきさんのことは、いつも家内から聞いております。今日は、私たちの将来についてご相談したくてお伺いしました。よろしくお願いします。」

すずきさん 「こちらこそ、よろしくお願いいたします。恵子さんとは、とても親しくさせていただいています。なんだか気が合うんですよ。」

正夫さん 「そうでしたか、妻はすずきさんのことをとても信頼しています。それで、今日は、遺言書のことについて教えていただきたいなと思って。私たち夫婦には子どもがいません。私の両親は既に他界していて、滅多に会いませんが姉と妹がいます。仲が悪いというわけではありませんが、大した付き合いはしていません。このような場合、私が先に死んだら、私の遺産は全部妻のものになりますか?」

すずきさん ご主人が遺言書を書くことで、すべての財産を恵子さんに残すことができます。遺言書がないと、法律では、恵子さん4分の3、お姉さんと妹さんが8分の1ずつ遺産を相続することになりますが、遺産を分ける過程で、恵子さんが、お姉さんと妹さんと話し合うことになります。もちろん、お姉さんと妹さんが、恵子さんに全部の遺産をあげてもいいと言えば、恵子さんが全部相続することになりますが、最近は皆さん権利意識が強いですから、そういう方はあまりいらっしゃいませんね。」

正夫さん 「なるほど、そういうことですか。妻に、私の姉妹のことで負担はかけたくないですからね。遺言書があれば、必ず、妻に全部の遺産を残すことができるのですね?

すずきさん 「そうです。兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分というのは、相続人が最低限相続できる取得分のことです。法律では、妻や子、親には認められていますが兄弟姉妹には認められていません。正夫さんの「すべての財産を妻に相続させる」という遺言書があれば、お姉さんと妹さんは、何も相続できないということになります。遺言書が奥様を守ってくれますよ。」

正夫さん 「そうですか、それを聞いて安心しました。」

恵子さん 「私も安心したわ。よかった~ なんだかお腹空いてきちゃった(笑) ところで、もし、私が先に死んだ場合はどうなるの?」

すずきさん 「恵子さんには、弟さんと妹さんがいらっしゃるでしょ。お父さんとお母さんは、ずいぶん以前に亡くなられているよね。遺言書がないと、恵子さんのご主人が4分の3、弟さんと妹さんがが8分の1ずつになるわ。」

恵子さん 「実は、弟は昨年交通事故で他界したの。弟には息子と娘がいるの。小さい頃、よく一緒に遊んであげたから、私にとってもなついてくれているの。今でも年に数回、一緒に食事したりしているわ。」

すずきさん 「弟さんのこと、ご愁傷さまです。弟さんのことは聞いていたけど、事故のことは知らなくてごめんなさい。」

恵子さん 「お気遣い、ありがとう。こういうことって、聞いたほうは反応が難しいでしょ、だから、ついつい言いそびれちゃって。弟がいないと妹が4分の1を相続することになるのかしら?」

すずきさん 「それが違うの。本来、弟さんが相続する分8分の1を、甥御さんと姪御さんが16分の1ずつ分けることになるの。」

恵子さん 「えぇ~、そうなの、頭がこんがらがってきちゃうわ。」

すずきさん 「恵子さん、大丈夫よ(笑) 遺言書がないと、恵子さんの遺産は、正夫さん4分の3、妹さん8分の1、甥御さん16分の1、姪御さん16分の1、になるの。分け方については、相続人全員で話し合うことになるわ。正夫さんが、妹さん、甥御さん姪御さんと遺産について話し合わないといけないの。

正夫さん 「そうなんですか、それはちょっと僕もつらいな~」

恵子さん 「私、長年デザイナーをやってたでしょ、子どももいないから、お金はそこそこ貯めてあるの。主人も老後のお金は余裕があるから、できれば、甥と姪にいくらかあげたいの。そういう場合は、どうすればいい?」

すずきさん 「恵子さんが遺言書を書いておけばいいのよ。正夫さんには、この財産を相続させるとか、甥御さんには、いくらあげるかとか・・・」

恵子さん 「そういうこともできるのね。それはいいわね。二人とも子育てにお金がかかるから、少しでも遺産が入ったら助かるんじゃないかしら?妹は十分な資産を持ってるから、特に要らないかなぁ。」

すずきさん 「恵子さん、具体的なことはこれからじっくり考えていけばいいわよ。正夫さんも恵子さんも、遺言書が必要だと理解していただけたみたいでよかったわ。」

正夫さん 「なんだかスッキリしました。漠然とは考えていたのですが、ついつい先延ばしにしてしまっていて・・・まずは、何から始めればいいですか?」

すずきさん 「財産のリストアップから始めるといいですね。」

正夫さん 「今は時間もあるので、早速、始めてみます。」

すずきさん 「例えば、預貯金の相続手続きは各銀行ごとに行う必要があります。銀行の数が少ないほうが、手続きの負担が軽減できるのですが、万一、銀行が破綻した場合、預貯金が保護されるのは1,000万円までです。そのあたりも考慮して考えられるとよいですね。ちなみに、外貨預金は預金保険制度の対象外となりますのでご注意くださいね。」

正夫さん 「なるほど、そういうことも考えて財産を守っていかないといけないですね。財産リストを作ったら、あらためて連絡させていただきます。」

すずきさん 「財産リストのサンプルをメール添付させていただきますね。メールアドレスを教えていただけますか?」

正夫さん 「ありがとうございます。」

恵子さん 「私も始めてみるわね。主人よりは、のんびりになりそうだけど(笑)」

すずきさん 「そうね。じゃ、また来週、お稽古でね!」

 

POINT 子供のいない夫婦はお互いに遺言書を書くべし!