遺言相続 会話式Q&A 2.子どもに知られずに遺言書を作成したいのですが。
登場人物 一郎さん(78歳 資産家 妻は既に他界) 息子二人 仲はよくない
一郎さん 「私は、先祖から引き継いだ財産を含め、3億円以上の財産を持っています。子どもは息子二人です。兄弟の仲は、あまりよくありません。遺言書を書くと言うと、兄弟でひと悶着ありそうです。子どもたちに知られずに、遺言書を書くことはできますか?」
すずきさん 「子どもたちが揉めるのはみたくないですからね。お気持ち、お察しいたします。なかには、遺言書を書いたことを、家族には絶対知らせたくないので、行政書士からの連絡はわからないようにしてほしいと言われる方もいらっしゃいますよ。遺言書を書いたことが原因で、あれこれ言われるのが嫌なんだそうです。」
一郎さん 「やはりそうですか。」
すずきさん 「次のような例もありました。自宅不動産や預貯金を長男に相続させるという遺言書を書かれた方がいらっしゃいました。その内容を聞いた長男は、それ以降、遺言者をぞんざいに扱い、怒った遺言者が後日、長男には内緒で、遺言書を書きかえられました。長男は、遺言書で財産をもらえることが確実になったので、遺言者を大事にしなくなったのでしょうね。」
一郎さん 「そんなこともあるんですね。参考になりました。」
すずきさん 「すみません、話がそれましたね。現在、一番お勧めできるのが公正証書遺言です。公正証書遺言は、公証役場で作ります。公証人という元裁判官や元検事が作成するので、証拠能力は非常に高いです。また、原本は、公証役場で保管されるので、偽造変造の恐れもありません。デメリットは、証人が二人必要だということです。そういう意味では、だれにも知られずに作成することはできないということになりますが、行政書士などの専門家や公証役場で用意してくれる証人ですと信頼できると思いますよ。」
一郎さん 「なるほど、そうですか。子どもたちが知られなければ、それもいいかもしれませんね。」
すずきさん 「そうですね。もう1つデメリットがあるのですが、公正証書を作成するには、費用がかかります。」
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一郎さん 「費用がかかるのは仕方ありませんね。元裁判官や元検事さんが作成してくれるのですから、安心できます。」
すずきさん 「おっしゃる通りです。大事な財産を安全確実にお子さんに引き継ぐコストですからね。」
一郎さん 「なんだかほっとしました。私の面倒をよくみてくれる子どもには、多くの財産をあげて、そうでない子は、※遺留分だけにしようと思います。」
すずきさん 「そうですか。子どもは親の思い通りにはいきませんね。」
※遺留分 相続人が最低限相続できる相続分。相続人が子どもだけの場合、通常もらえる相続分の半分が遺留分になる。兄弟二人が相続人の場合、遺留分は、遺産の4分の1になる。
一郎さん 「財産のことで、いろいろ相談にのってほしいことがあるのですが。」
すずきさん 「もちろん、承ります。公正証書遺言のご依頼の場合は、報酬をいただくことになりますが。」
一郎さん 「けっこうです。いろいろ相談に乗っていただきたいことがありますので、よろしくお願いします。」
すずきさん 「行政書士に公正証書遺言の作成をご依頼いただいた場合、公証役場との打ち合わせは、すべて私のほうで行います。作成日に、公証役場に一度行っていただくだけで大丈夫です。また、将来、遺言書の書き直しなどがあった場合にも、事情がわかっているので、スムーズに進むと思います。年齢とともに、自分で何かを行うのが億劫になってきますよね。行政書士が、手足となって動きますので、ご安心くださいね。」
一郎さん 「それは有難いです。財産をまとめて、あらためてこちらから、連絡させていただきます。」
すずきさん 「はい、お待ちしております。」
POINT 子どもに知られずに遺言書を書きたい場合、自筆証書遺言、公正証書遺言がある。公正証書遺言の作成には費用がかかり、証人二人も必要だが、証拠能力が高く相続発生後すぐに相続手続きが行えるのでお勧めです。